現呉服業界の問題



今の呉服業界の最も重大な問題は「信用」「職人技術」「原材料」といった
この3つ全てが失われようとしている事です。
どれか1つ欠けただけでも着物を創る事は出来なくなってしまうからです。

中でも「信用」が失われつつあるという真意は
皆様が肌で感じておられるのではないかと思います。

強引な商売手法による大手企業の倒産、販売者-お客様間での相次ぐトラブルなど、 皆様のこの業界に対する不信感は日々深まっているのではないかと思います。

中でも展示会費用や売れない着物分(不良在庫分)の余分なコスト、中間マージンなどを お客様へ負担させる利益第一主義の商売体制は目も当てられない程酷い事になっております。

最近では、それにお気付きになっておられるお客様が大変増えておられます。
しかし、そういったお客様に対してはメーカー直通と謳って
出来る限りお客様に中間マージンを感じさせず、
如何にして中間マージンを隠し取るかといった
業界戦略がなされているのも悲しい現実で御座います。

以前私もそういった中で働いた経験が御座いますが、この業界の上の人は皆
「いかにお客様にばれずにうまくお金を取るか?」という戦略にのみ頭がいき、
「お客様の求めておられる最高の呉服を作る」というごくごく当たり前の
正しい思考回路が全く無くなってしまっております。
私はそれが耐えれずに直ぐに辞める事になりました。

昔は、如何に良い呉服を創るか、如何に着る人に喜んでもらえるかという
ごく自然な考え方でこの業界は成り立っておりました。
だから、昔の呉服は素晴らしいものが多く、良い呉服店も多くありました。

しかし現在は呉服の需要減少に伴い、
業界全体が苦しくなり利益のみを追求してしまった結果、
そういった自然な考えで商売をしている所は、ほぼ皆無となってしまいました。

「行寛」では昔と変わらずそういった真摯な気持ちで日々仕事に取り組んでおりますが、 それだけではこの業界の失われた信用を取り戻す事は少し難しいように思われます。
私共だけではなく、そういった考えや気持ちを持って仕事に取り組む姿勢を
もう一度この業界に浸透させる事が私共の使命だと考えております。

私共だけではなくこの業界の人間がもう一度昔のように自然な考えを持つ為には
何をしなければならないか。
それを考えて様々な活動をしてゆく事が大切だと思っております。


「職人技術」が失われているというのは、
一級の職人が引退しても跡継ぎが居ない為に技術伝承が出来ていないという問題と
全体的な技術の低下という問題があります。
この原因は職人に対する扱いの悪さと、職人の賃金の安さです。

職人は、技術も必要で過酷な労働の上に非常に賃金が安いので
当然辞めてしまう人が多くいます。
そして、そんな仕事を継がそうとする人も継ごうとする人も減少する一方です。
これでは技術伝承は当然ながら出来ませんし、
職人の絶対的人数も大幅に減ってきております。
このままでは着物職人はほとんど居なくなってしまいます。

技術の低下というのは職人が高齢化して技術に衰えがあるという事もありますが、
それ以上にメーカーの職人に対する扱いが酷い為にやる気さえなくなります。
そんな状況で良い技術が出せる訳がありません。

例えばある職人に着物を創らせておいて、
後から有名な作家の烙印だけを押し、作家作品として高額商品にしたり、
コスト削減の為に中国への技術輸出をしたり、
コスト削減の為に技術の要らない着物の大量生産をしたり、
コスト削減の為に高い技術が必要とされない商品ばかり制作企画したりと
お客様は分らないだろう、ばれないだろう、という前提でこういった事が行われております。

職人はこんな事を快く思うはずが無く、
努力して一生懸命に力と気持ちを込めて制作する事ができなくなってしまいます。
高い技術を持ち、技術を向上させようとする気持ちなんて無くなってしまいます。
そういう仕事を求められず、そんな良い仕事に巡り合う事が滅多に無いからです。

職人技術を守る為には、
・高い技術で気持ちを込めて最高の着物を創る「良い仕事」を職人に提供する事、
・その対価として今の通常賃金とされる3倍~5倍程度の賃金を支払う事、
・そして今のうちに若い職人を育てる事
この3つが絶対条件です。
こうしないと職人技術を守る術は無いでしょう。

たとえそうしたとしても無駄なコストや中間マージンを省けば、
今の一般的な価格よりも断然お安いお値段でお客様に提供する事が出来るのです。


「原材料」が失われかけているという問題ですが、
これも大きな問題で、白生地、刷毛、糊、染料など、この他にも
材料、生地、道具、に至るまで消滅の危機にあるものもあります。

これは大きく分けて2つ原因があり
自然資源が失われてかけているという資源的な問題と、
原材料を生産する職人がいなくなる結果として原材料が無くなってしまうという
二次的に起こる問題とがあります。

資源に関しては正直どうしようもない部分もありますし、
一人一人が気を付けなければならないものもあります。
どうしても無くなってしまうものに関しましては代用品を探す、
代用品を作るなどして対応策を立てます。

二次的な問題としては、白生地自体が作れなくなってしまう可能性があります。
白生地の生産は非常に厳しい状況でどんどんと縮小せざるを得なくなっております。
主に着物を生産する数が少なくなり、金銭的な部分が大きな原因です。

ここでもある程度白生地や原材料に対して、
今までよりも高い対価を支払わなければならないでしょう。
しかし、これは当たり前の事です。

作り手の職人が困らない、仕事を続けていけるだけの対価をきちんと支払うという
最近は出来ていなかった当たり前の事をやっていかなければなりません。

もちろん原価は上がりますが、今まで原価の4倍~数十倍と取っている中間マージンや余分なコストを省けば
今よりも格段にお安い価格でお客様にご提供出来るのです。

今の呉服業界の体制は製造から販売までの流れには相当なムダが存在し、
そのムダは全てお客様がお代金としてご負担する事になっています。
物が悪くても高い。物が少し良いと高過ぎる値段に。

                    (小売店) (お客様)
メーカー → 問屋 → (前売り問屋)→ 呉服屋 → 消費者

という沢山無駄の含まれた構図が完全に浸透し、出来上がっております。
当然の様に間接マージンや不良在庫分の金額上乗せなどの
無駄なコストがお客様のご負担となっております。

一般の小売価格というのは、
例えば原価10万円のお着物は約70万円~200万円程、
原価20万円にもなれば200万円~500万円程の金額となってしまっています。
それ以下の金額が付いているお着物の原価は大体一反5万円までです。

値段の理由は上図の間接マージンと、展示会経費やその他諸費用、
それとかなり大きな割合を占めるのが
呉服屋(小売屋)が常に持っている「売れない在庫」でございます。
この「売れない着物」の分が、売れる着物にお代金として上乗せされているのです。

まだ現在でもこういった間違った体質で着物を売ったり、製造しているお店が沢山ございます。
残念ながら、それがまだ主流なのでございます。
私共の様な体制で着物を制作しているお店は残念ながら今の所、見当たりません。

イベントや展示会、ホームページ上などでは、
如何にも余分なコストがかかっていないかの様に宣伝しながらも
実際には山ほどマージンや余分コストがかかっていたり
殆んど今までの体質とは何も変わっていない、
いわゆる建て前だけのお店は幾つか見当たります。
その現実を私は非常に悲しく見ております。

少なくとも本当に一流のお着物を扱っているところでは一つもないでしょう。
それには理由がございます。

その理由は、間接マージンを払わないお店には取引停止などの圧力がかかります。
しかし、私はそれに断固として戦います。

お客様の敵、その様な圧力にはお客様の為、自分の為にも断固として戦い、
お客様に安心してお着物をご提供出来るこの体制を守り抜きます。

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